夫のパッチと私

お気に入りの品

出会いは突然だった。

季節は冬、仕事を終えた夫が「これ、捨てといて」と言って渡してきたのが、パッチとの出会いである。

夫が捨てようとしていたのは、ユニクロのヒートテックタイツだ。タイツと名付けられてはいるが、裾はくるぶしあたりまでしかなく、所謂パッチという分野に属する代物だ。「パッチ」という呼称は、そのダサさ故にユニクロには受け入れられなかったのだろうと邪推する。

夫曰く、ヒートテックタイツは暑すぎるとのことだった。デスクワークで基本的には室内にいることが多い彼にとって、ユニクロの技術力はオーパースペックのようだ。

「使ってもいいよ」

そう冗談ぽくいった夫の目に、いそいそとそのパッチを自分の洋服ダンスに仕舞う妻の姿は、どう映ったのだろうか。

何を隠そう、在宅ワークのために暖房をケチって、寒さに耐える毎日を送っていた私はこんなものを探していた。いや、厳密に言うと、探そうとしていた。が、なんとなく面倒臭くて、「寒いなァ」と思いつつ、適当にやり過ごしていたところに、思いがけないプレゼントが舞い降りたのである。なんとなく面倒臭い心持ちがしていたのは、コイツと出会うためだったのかという運命さえ感じた。

次の日から、私はパッチを履き始めた。男性用のため、股間は前開きである。無駄になった前開き仕様の股間に、若干の気まずさを感じずにはいられなかったが、さすがユニクロ、さすがヒートテック。薄くても確実に暖かい。寒すぎて頻度が増していた尿意も心なしか落ち着いた気がする。あの尿意に翻弄された日々も、パッチと出会うための糧だったのだと思うと浮かばれた。

「これはもう手放せない」となって、はや一年。また冬が来た。暖かくなってから洋服ダンスに仕舞い込まれていたパッチは、再び過酷なヘビーユーズに耐える日々を送ることになる。

というのも、パッチは一枚しかない。夫から譲り受けたものを毎日洗濯しては履き、洗濯しては履き、を繰り返していた昨年の冬。もう、ちゃんと畳むのも億劫になってしまい、裏返っていてもそのまま履いていた。なんだったら、裏返しの方が縫い目が当たらないので、より履き心地が向上すると思っていたぐらいである。

「おっ、今日は裏返しかい」などと思いながら、今日も前開き股間のパッチを履く。「ユニクロのことだからちゃんとレディースも作ってるんだろうなァ」とは思いつつ、やっぱり買いに行くのは面倒なのだ。


ブランド:ユニクロ
商品名:ヒートテックタイツ/前開き
価格:1290円(2026.1現在)

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